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 肌寒い中、卒業シーズンを迎えた今年は、春の到来が遅く

暖冬慣れした身体には、厳しい物があります。

素敵なドレスに身を包んだ卒業生を見ると遠い昔が思い出されます。

 

 父が倉を開け、エンジの袴を手にして出てきました。お下げ髪に結ぶ

リボンは、姉が買ってくれました。明日卒業式を迎える私の為に用意された物が

次々と揃えられ気分は嫌でも高揚してきます。明日は頑張って間違えないで

答辞を読まなければと緊張は高まるばかりで。

 一度キチンと着て見せてと母が手縫いの着物を着せられ、袴を着けると丈も

丁度良くみんなの前で一回りして見せた、小学校6年生の私は、背丈が小さく

未だ少し大きめに仕立てた四つ身で充分でしたから、一反の反物で着物と羽織が

母の手によって縫われしつけ糸が抜かれ、明日の門出を待っていました。

戦後がヤット落ち着きを見せ始めた時代で、普段はもんぺ姿で登校しておりましたから

晴れ着を着るのはお正月や親戚の婚礼ぐらいな物で心は浮き立つおりました。

 田舎では、祖母伝来の袴が女の子にはエンジ・男の子には紺色と長持ちの中に

経とうに包まれて姉も着た袴ですが、メリンスは、虫一つ喰われずに保存された物で。

二毛作地帯で養蚕が盛んな土地柄か当日は卒業生は皆キチンと羽織袴姿で晴れやかに

着飾り、仰げば尊しを涙ながらに歌ったのでした。

あれから何年が過ぎたでしょうか・・・